アトリエみゅー 浅井みゆき さん

「もっと甘えればよかった・・・」

 

 私もケアラー(家族看護者)さんだったんです。5年前ですね。白血病を発症した母を父と二人で看護していました。父は毎日病室に泊まり込み、朝になると洗濯と飼っている犬の世話に家に帰り、終わればまた病院に戻るという生活でした。

 

 私は当時、両親が暮らしている実家から車で10分ほどの家に一人暮らしをしていましたが、仕事(当時、エステティシャン・整体師としてサロンに勤務)が忙しくなかなかお休みを取ることが出来ず、帰宅時間もほぼ深夜でした。

 

 それでも週に二度のお休みは、母の看病で病院を訪れていましたが、 休日でも出勤になることも多々あり、深夜の帰り道、高速道路から病院の看板がライトアップされ遠くに見えそこを通過する度に「お母ちゃんゴメンネ」と泣きながら帰る毎日でした。

 

 でも、今考えればもっと周囲に甘えれば良かった。お休みを下さいと言えば良かったんですよね。言えなかったんです。父に甘えていた部分も多々あると思いますが、白血病は治ると信じていた部分もあります(その時期 そういった情報がよく入ってきていたので)。そして、スタッフやお客様に迷惑はかけられないと思っていました。その時の辛かった思い、「周りに甘えれば良かった」という気持ちが、ケアラーサポーターになろうと思ったきっかけです。

思っていることを口にできなくて

 

 私の場合、まず「仕事を休みたい」ということが言えませんでした。重い症状かもしれないけれど、毎日家で看護しているわけではなく、母が入院している状態で、「休みます」と言えなかったんです。でも、心が苦しくて……。

 

 私は毎日母の容態を考えていますが、職場の人からしたら”1日経ったからといって、母親の症状が悪くなっているわけではない”と思われるんじゃないか、と考えてしまうと、どうしても口に出せなかった。

 

 でも辛いんです!母の看病に集中出来ない自分が情けなく、悲しく、悔しく……。入院中、仕事を優先させていた自分をだんだんと責めるようになっていきました。

 

 エステティシャン・整体師は人に癒しや元気を与える仕事。それなのに心の中は悲しさ、辛さでいっぱい。「こんな私が施術しててごめんなさい」と思っていました。

 

 しかも、その時にお客様から「大変な仕事ね~」と言われれば「すっごく楽しいんですよ~」と心とは裏腹のことを満面の笑みを浮かべ、話している自分が「私って嘘つきだ!」と嫌になり、どんどんと自分を責め立てていきました。その気持ちは母が亡くなって一年以上続きましたね。

とはいえ、任せきりにもできない…

 

 また、担当医の先生始め看護師さん達には本当にお世話になりましたが、母は大勢の患者さんの中の一人。痛みを訴える母の着替えやらシーツ替えを、時間に追われながらケアされるのを、はらはらしながら見ていました。

 

 忙しい中 一人に時間をかけることができないのは分かるものの、「もっと優しくして……」とどうにも見ていることが辛くなり、早朝なら自分たちでできると、毎朝病院に寄って父と一緒にやりました。

 

  治療方針に関しても、「薬を変えます」と言われて、「なんで?」と思っても専門家ではないので受け入れるしかありませんでした。3日間点滴をしていて、そこから動けなくなってしまった母を思い返すと、治療方針に関して、もっと説明や分かりやすくする方法があっても良かったのではないかと思います。

 

 

 そして、母だけでなく父も年齢が年齢ですので、毎日病院のベッドに泊り込みで体が辛いと思い、変わってあげたい気持ちがありました。全てを任せきりにするのも心配で、入院している母だけでなく、献身的に看護する父を見て、辛い気持ちになる時もありましたね。 

自分の体調の変化に、ようやく気がつく

 

 私は、看護生活に入る前から、朝は7~8時に起き深夜2~3時に帰る生活。もともと寝不足でしたけれど、朝、母の入院している病院に寄るようになってからは、さらに寝不足になりました。仕事は、自動車で高速を利用しての通勤。次第に居眠り運転をするように……。これは危険だと判断し、料金所脇の停車スペースで仮眠を取るようになりました。

 

 しかし、どんどん時間帯も早くなり、ほぼ毎日居眠り運転。仮眠しても仮眠しても、身体が追い付かなくなってきてしまったんです。なので、自宅の駐車場に帰り着いた時は、「今日も無事に帰ってこられた~」と本当に今生きていられるのが奇跡のような毎日を過ごしていました。

 

 でも、これで万が一事故でも起こしたら、会社にも迷惑がかかると思い悩んだあげく、勤務時間の短縮を思い切って申請しました。すると、あっさりと認めてもらったのです。

 

 ですが……、せっかく勤務時間の短縮を認めてもらったのに仕事頼まれるとついつい引き受けてしまう性格。元の木阿弥になりました。結局、いつも帰るのは午前0時過ぎ。このままではやっぱりいけない。体力的に限界を感じ、退職願いを提出しました。

 

 思い返すと、自分の身体が壊れてしまう、とこの頃になってようやく気付いたのですね。それも実は、ある人に声かけられて初めて自覚したんです。

ケアラーさんは頑張っている人。キャンドル作りで心を解放してほしい

 

 ケアラーさんは、周りに辛さや大変さを言えない方のほうが多いと思いますが、何も言わなくても本当はすごく頑張っていますよね。

 

 でも、甘えていいんです。そんな時だからこそ『ケアラーサポートマーク』を見つけて、「頼れるところがあるんだよ」と伝えたい。複数のサポーターがいるので、「今日はこの人」「次はこの人」と変えてもいいと思うんです。

 

 介護・看護を頑張る中でも、気が抜けるところが必要です。寄り道できるところ、5分でも10分でも頼れるところが見つかるだけで介護・看護中の追い詰められている気持ちから、少しだけでも解放されたら……。そのために、気持ちを吐露できる雰囲気作りをしたいと思っています。

 

 私がケアラーサポーターとして提供しているのは、キャンドル作りです。キャンドルを灯すことでも癒され、心を落ち着かせてくれますが、それ以上にキャンドルを作ると自分の想いや気持ちが解放されるのですね。家族のケアに対して、仕事に対して、自分自身に対して色々と思い悩むことの多いケアラーさんが自分の気持ちを解放できる場所になれたらと思っています。

 

 もちろん、身体のケアのプロでもあるので、辛い身体の症状を緩和するお手伝いもできますから、遠慮なくご相談くださいね!

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